大人計画『キレイ』雑感その1(ネタバレ注意)

何ヵ月ぶりの更新なんだ。
誰が見るんだ。
いだてんの感想はどうしたんだ。

とかいう細かいことは、この際、
電車の網棚にでも置いて帰って、
忘れ物センターにも問い合わせずに、
何もなかった顔でふてぶてしく、
記事を書いてしまおうと思う。

先日、大人計画の舞台
『キレイ~神様と待ち合わせした女~』
を観て来ました。

フェスティバルホールの一番後ろの安い席で、役者の顔は豆粒ほどだったけど、それでも大満足!✨

もうめちゃめちゃ楽しませてもらったので、感想を書きたくなっちゃったのである。

でも、この作品はほんとうに多面体で、
キャラクターもお話も煩雑に
入り組んでいるため、
それに一つ一つ言及していったら、
きりがない。

というか、ほんとうに優れたエンターテイメントだったので、感想とか分析とか小難しい後付けは、この作品には不要、
無粋な行為なのかもしれない。

と、思いつつ…

まぁ、今一番心に引っ掛かったことだけ、
つれづれに、書いみようかと。

感想というより雑感ですな。
買っちまったよ、戯曲本。

1、役者のこと


生田絵梨花は日本の宝である。

神様、宝をありがとう。

彼女の歌は、
ただただシンプルに私の胸を刺して貫いた。

彼女の透明感のある歌声が、
作品を純粋かつ重厚なものにしてくれたのは
間違いない。

文句なしの主役。あっぱれじゃ!

                             🐣

阿部サダヲは日本の宝である。


おっと日本は宝島だったのか。

どう考えても嫌な役なのに、
阿部サダヲが演じただけで、私たち観客は
彼を愛さずにはいられなくなる。
彼の出番を心待ちにしてしまう。

うまい役者はいっぱいいるけど、
存在するだけで愛される役者って
意外と少ないのでは?

あーごめんね、田畑さん。
あなたが主役の時の感想書けなくて。

2、幸せ~ってなんだぁっけなんだっけ♪


この作品をごくごく純粋に、
エンターテイメントとして楽しんだ後、
つらつらと思ったこと。

それは、


幸せってなんじゃらホイ


ということ。(↑古い)


お金持ちになれれば幸せなのか?
地位や名誉を手に入れたら幸せなのか?
結婚して、家庭を持って、
落ち着いた暮らしができれば幸せなのか?


そして、またそこから連想したのが、

「アンパンマン」と「宮沢賢治」である。


この二つの共通項とは?

好きな方はおわかりになるかも…そう、

「自己犠牲」の精神です。


3、ぼくの顔をお食べ


やなせたかしの自伝を読んだとき、
アンパンマン誕生秘話が印象的だったので
よく覚えている。

やなせ氏いわく、

「世のヒーローは、かっこよすぎる。
戦っても傷一つ付いていないじゃないか。

ほんとうの英雄は、
人を助けるために自分の身を投げ出す。

だから、もっとボロボロの傷だらけで、
カッコ悪いはずだ。」

(↑要約)


そんな思いから生まれたのが、
いまいちかっこよくないアンパンマン。

彼は人助けのために自分の顔を差し出す。
顔が欠けるのだから、そりゃボロボロだ。
カッコ悪いことこの上ない。
しかし、人の腹を満たし、幸せにする。

最高の奉仕とは「自己犠牲」なのである。

(ちなみに、しょくぱんまんは食べられると
薄くなるらしい。4ツ切り→6ツ切り的な?)
 
                                 🐣


このアンパンマン哲学が、
「キレイ」の作中でいうと、
「ダイズ丸」(橋本じゅん)の精神と
つながっている。


ダイズ丸は、
戦闘要員として製造された人造人間
「ダイズ兵」の一人。
原材料は大豆である。


彼らは戦場でひたすら闘う。
傷つけば、血を…いや豆乳を流しながら。
そして、戦死すれば、食料となる。

ダイズ丸は、
「早く死んで、人に食べられたい」と願う。
彼にとってはそれが幸せなのである。

自分が食べられて、
その人の腹が満たされるのが幸せ…って、


アンパンマンやん。


人の幸せのために我が身を捧げる、
自己犠牲の精神。


しかしそれは、

ダイズ丸が「大豆」だから、
そう思えるのである。

人間にはそれができない。


他人の幸せのために自分を犠牲にする、

そんなのは「キレイゴト」。

「損する」だけだ。


「人の幸せのために」なんて
高らかに喧伝しようものなら、
たちまち、「偽善」と言われてしまう。それが人間である。

(調整豆乳、たたんだら「ありがとう💓」の文字が見えるって知ってました?)

4、偽善者カスミ


作中の「偽善者」といえば、
私が一番気に入ったキャラクター
「カスミ」(鈴木杏)である。

彼女は金持ちのお嬢さん。

「いい子」に育てられたが、
自分の善意に疑いを持ち、
「親切」な行為に固執する。

自らを「偽善者」と呼んで憚りない。


そんな彼女は、
「曇りのないいやしさ」を持つ
「ケガレ」(生田絵梨花)に惹かれる。



ケガレはお金が大好きで、
「嵐のようにケチくさく」、
「いやしい」が、
それがカスミには
かえって気持ちがいいらしい。

裏表がなくていい、と。



カスミはいう。

「ほんとうのいやしさはね、
モノに順位があるってことなの。
こう、勝ち負けがあるってことなの。
私は、すごくいやしいの」


そうなのだ。

人間社会はみな順位をつける。
資本主義においては勝った者が
いい目をみる。

「儲ける」のだ。


幽閉されていた地下室から逃れ、
「ソト」ヘ出たケガレがこだわるもの。

それは、

「損得勘定」だ。


そう、

損か、得か。

人間はそうしたものさしで幸せを測る。

それが人間のいやしさである。


損得勘定、というと、
思い出すのが私の大好きな作家、

「宮沢賢治」である。



……えらい長くなったな。


その2につづく。
着地点は、ぼんやりしたままに。←オイ笑

お暇な方だけお付き合いいただければ…。
賢治さーん。

うつむく銅像って珍しい気がする。

たいがい上を向いてるもんな。
偉人だもんな。

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